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AIファクトリーとソブリンAI、インド独自の戦略
インドのAIスタートアップの急成長を支えているのが、「AIファクトリー」と呼ばれる次世代インフラの整備だ。インドの主要クラウドインフラプロバイダーはデータセンター能力の拡大を進めており、NVIDIAのGPU導入は2024年末までに18カ月前と比較して10倍近くに増加する見込みだ。 この取り組みを主導しているのが、データセンタープロバイダーのYotta Data Services、Tata Communications、E2E Networks、Netwebの4社。これらの企業は、開発者が国内のデータセンターリソースを活用できる環境の整備を急ピッチで推進。LLMだけでなく産業用デジタルツインなど、さまざまなAI駆動のプロジェクトを進めることが可能となりつつある。 たとえば、Yotta Data Servicesは、Shakti Cloudプラットフォームを通じて、インドの企業、政府機関、研究者に対し、数千台のNVIDIA Hopper GPUが搭載されたクラウドサービスを提供。同社の顧客は、NVIDIA AI Enterprise(エンタープライズ向けの包括的なAIソフトウェアプラットフォーム)を通じて、AI推論のためのマイクロサービス集合体であるNVIDIA NIMや、生成AIアプリケーション用の参照アーキテクチャセットであるNVIDIA NIM Agent Blueprintsにアクセスできる。 これらのインフラ整備の背景にあるのが「ソブリンAI」という概念だ。ソブリンAIとは、国家が自国のインフラ、データ、労働力、ビジネスネットワークを活用してAIを開発・活用する能力を指す。経済発展だけでなく、安全保障の観点からも国家アクターの間で注目される概念となっている。 インドのモディ首相も「インドは小麦粉を輸出して、パンを輸入するべきではない」、また「データを輸出して、インテリジェンスを輸入するべきではない」と発言するなど、ソブリンAIに対して積極的な姿勢を示している。 ソブリンAIを構成する要素は大きく2つ。1つは物理的なインフラ(AIファクトリーなどのデータセンター)、もう1つはデータに関するインフラだ。後者では特に、インド固有の言語や文化に対応した独自の基盤モデル(大規模言語モデル)の開発が重要となる。インドには22の公用語と1,500以上の方言があり、これらに対応したAIモデルの開発は、インドのデジタルサービスの発展に不可欠。これらのモデルは、固有言語の保持から金融詐欺対策まで、幅広い用途で活用することができる。 こうした包括的なAIインフラの整備により、インドは独自のAI開発能力を高めつつある。次の課題となるのは、この整備されたインフラを活用できる人材の育成となるが、この点でもNVIDIAのAIトレーニング以外にさまざまな取り組みが本格化しており、多くのAI人材が誕生している。